H27年 5:占有 6:抵当権

【 問 5 】 占有
占有に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1. 甲建物の所有者Aが、甲建物の隣家に居住し、甲建物の裏口を常に監視して第三者の侵入を制止していたとしても、甲建物に錠をかけてその鍵を所持しない限り、Aが甲建物を占有しているとはいえない。

2.乙土地の所有者の相続人Bが、乙土地上の建物に居住しているCに対して乙土地の明渡しを求めた場合、Cは、占有者が占有物について行使する権利は適法であるとの推定規定を根拠として、明渡しを拒否することができる。

3.丙土地の占有を代理しているDは、丙土地の占有が第三者に妨害された場合には、第三者に対して占有保持の訴えを提起することができる。

4.占有回収の訴えは、占有を侵奪した者及びその特定承継人に対して当然に提起することができる。
 

【解説】1 誤り
建物の占有に関し、判例は、以下のように判断している(最判昭27.02.19)。

家屋の所有者が、これに錠をかけて鍵を所持し、又は標札貼紙等により自己の占有中である事実が第三者にもわかるようにしておかないからといって、必ずしも所有者に家屋の所持がないとはいえない。
家屋の所有者が、その家屋の隣家に居住し、常に出入口を監視して容易に他人の侵入を制止できる状況にあるときは、所有者はその家屋を所持するものといえる。
2 誤り
物の所有者(本問のB)とその物に関する用益権を主張している者(C)が用益権の存否を争っている場合、用益権を主張するCの側で、その権利の存在を証明する必要がある。
占有者が占有物について行使する権利は適法であるとの推定規定(民法188条)を根拠として、明渡しを拒否することは許されない(最判昭35.03.01)。

3 正しい
占有を代理している者も、占有保持の訴えを提起することができる(民法198条)。

■類似過去問(占有の訴え)
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4 誤り
占有回収の訴えは、原則として、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない(民法200条2項本文)。例外は、その承継人が侵奪の事実を知っていたときである(同項但書)。
本肢は、「その特定承継人に対して当然に提起することができる」とする点が誤り。

■類似過去問(占有の訴え)
 


【 問 6 】 抵当権
抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1. 賃借地上の建物が抵当権の目的となっているときは、一定の場合を除き、敷地の賃借権にも抵当権の効力が及ぶ。

2.抵当不動産の被担保債権の主債務者は、抵当権消滅請求をすることはできないが、その債務について連帯保証をした者は、抵当権消滅請求をすることができる。

3.抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する。

4.土地に抵当権が設定された後に抵当地に建物が築造されたときは、一定の場合を除き、抵当権者は土地とともに建物を競売することができるが、その優先権は土地の代価についてのみ行使することができる。
 
【解説】
正解:2
1 正しい
賃借地上の建物を抵当権の目的とした場合、建物の所有権と建物所有のための借地権が一体となって財産的価値を形成している。簡単にいえば、建物だけを手に入れても、土地の利用を拒否されるのでは意味がないのである。
したがって、建物についての抵当権の効力は、敷地の賃借権にも及ぶ(民法370条。最判昭40.05.04)。

■類似過去問(抵当権の効力の及ぶ範囲)
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2 誤り
主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない(民法380条)。これらの者は、被担保債務を全額弁済すべきだからである。

■類似過去問(代価弁済・抵当権消滅請求
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3 正しい
抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する(民法378条)。代価弁済というシステムである。

■類似過去問(代価弁済・抵当権消滅請求
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4 正しい
抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる(民法389条1項本文)。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる(同項但書)。

■類似過去問(抵当地の上の建物の競売)