H27年 3:賃貸借と使用貸借の比較 4:取得時効

【 問 3 】 賃貸借と使用貸借の比較
    AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物につき ①賃貸借契約を 締結
  した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法規定
  によれば、誤っているものはどれか。

1.Bが死亡した場合、①では契約は終了しないが、②では契約が終了する。
 
2.Bは、①では、甲建物のAの負担に属する必要費を支出したときは、Aに対しその
  償還を請求することができるが、②では、甲建物の通常の必要費を負担しなければ
  ならない。

3.AB間の契約は、①では諾成契約であり、②では要物契約である。

4.AはBに対して、甲建物の瑕疵について、①では担保責任を負う場合があるが、
  ②では担保責任を負わない。
 
【解説】
1 正しい
  賃借権は、被相続人の財産権の一部として、相続の対象となる。
  これに対し、使用借権は、借主の死亡によってその効力が失われる(民法599条)。

■類似過去問(賃借権の相続)
 
■類似過去問(使用貸借:相続)
 

2 正しい
  賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人
  に対し、直ちにその償還を請求することができる(民法608条1項)。
  これに対し、使用貸借において、借主は、借用物の通常の必要費を負担する
  (民法595条1項)。

■類似過去問(賃借人による費用の償還請求)

■類似過去問(使用貸借:費用負担)


3 正しい
  賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、
  相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生
  ずる(民法601条)。つまり賃貸借契約は当事者の合意のみで成立する(諾成契約)。
  契約の成立にあたって目的物の引渡しは必要ないし、書面により契約を締結する
  必要もない。これに対し、使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした
  後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を
  生ずる(民法593条)。つまり、契約の成立には、物の引渡しが必要である(要物契約)。

■類似過去問(賃貸借:契約の成立)

■類似過去問(使用貸借:要物契約


4 誤り
  賃貸借契約は、有償契約であるから、売買契約の規定が準用される(民法559条)。
  したがって、賃貸人は賃借人に対し、目的物の瑕疵について担保責任を負う
  (民法570条、民法566条)。
  使用貸借においては、貸主の担保責任について、贈与に関する同法551条が準用され
  ている(民法596条)。したがって、貸主は、目的物の瑕疵又は不存在について原則とし
  て責任を負わない(民法551条1項本文)。ただし、貸主が瑕疵・不存在を知りながら、
  借主に告げなかったときは瑕疵担保責任を負う。本肢は、「担保責任を負わない」と
  する点が誤り。

■類似過去問(使用貸借:貸主の担保責任)

■関連過去問(贈与者の担保責任)
 
【感想】



【 問 4 】 取得時効
A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1. Bが父から甲土地についての賃借権を相続により承継して賃料を払い続けている場合であっても、相続から20年間甲土地を占有したときは、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することができる。

2.Bの父が11年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有した後、Bが相続によりその占有を承継し、引き続き9年間所有の意思をもって平穏かつ公然に占有していても、Bは、時効によって甲土地の所有権を取得することはできない。

3.Aから甲土地を買い受けたCが所有権の移転登記を備えた後に、Bについて甲土地所有権の取得時効が完成した場合、Bは、Cに対し、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる。

4.甲土地が農地である場合、BがAと甲土地につき賃貸借契約を締結して20年以上にわたって賃料を支払って継続的に耕作していても、農地法の許可がなければ、Bは、時効によって甲土地の賃借権を取得することはできない。
 
【解説】
1 誤り
時効取得ができるのは、20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する(民法162条1項)。つまり、時効取得するためには、「所有の意思をもって」占有(自主占有)する必要がある。

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本肢のBは、賃借権を相続し、賃料を払い続けている。つまり、賃借人として占有(他主占有)しているだけである。したがって、Bは、20年間占有を続けたとしても、甲土地の所有権を取得することはできない。

26-03-4-3 - コピー

■類似過去問(取得時効:所有の意思がない場合)
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2 誤り
占有がBの父からBへと承継された場合、Bは、

自分(B)の占有のみを主張する
前占有者(父)の占有を合わせて主張する
のいずれかを選択することができる(民法187条1項)。
本肢では、まずBの父が11年間、続いてBが9年間占有しているから、これらを合計すれば占有期間は、20年になる。所有の意思や平穏かつ公然の占有という他の要件はみたされている(民法162条1項)。
したがって、Bは、甲土地の所有権を時効取得することができる。

■類似過去問(占有の承継)
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3 正しい
時系列に整理すると、

AからCへの譲渡・所有権移転登記
Bの時効完成
という順序であり、BにとってCは、時効完成前の第三者にあたる。
この場合、BとCの関係は対抗関係ではなく、Bは登記なくしてCに所有権を対抗することができる(最判昭41.11.22)。
A→C→Bと順次所有権が移転したに過ぎず、対抗関係は生じていないからである。

※時効完成後の第三者の場合には、対抗問題になる。比較して整理しておくこと。

■類似過去問(時効完成前後の第三者
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4 誤り
他人の土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときは、土地賃借権を時効取得することができる(民法163条。最判昭43.10.08)。また、時効による農地の賃借権の取得については、農地法3条 の規定の適用はなく、同条1項所定の許可がない場合であっても、賃借権の時効取得が認められる(最判平16.07.13)。

■類似過去問(農地の時効取得) 
【感想】