H28年 1:民法に規定されているもの 2:制限行為能力者

【 問 1 】 民法に規定されているもの

 次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか。

1.利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年3%とする旨

2.賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づく金銭債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済
 に充てることができる旨

3.免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる旨

4.契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者
 は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する旨
 

【解説】  正解:4

1 条文に規定されていない
 民法は、「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする」   と定めている(同法404条)。
 本肢は、民法に規定されていないどころか、民法の条文と矛盾している。

2 条文に規定されていない
 賃借人に債務不履行があった場合に、賃貸人が敷金を債務の弁済に充当することができることに
 ついて、民法の条文では規定されていない。これは、判例によって認められたルールである
 (大判昭05.03.10)。

3  条文に規定されていない
 「免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる」という旨
 の民法の条文は存在しない。

4 条文に規定されている
 第三者のためにする契約に関し、民法537条1項は、「契約により当事者の一方が第三者
 対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を
 請求する権利を有する。」と規定している。本肢は、この条文そのままの文章である。




【 問 2 】 制限行為能力者

 制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、
正しいものはどれか。

1.古着の仕入販売に関する営業を許された未成年者は、成年者と同一の行為能力を
 有するので、法定代理人の同意を得ないで、自己が居住するために建物を第三者
 ら購入したとしても、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができない。

2.被保佐人が、不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の
 申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。

3.成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を
 売却する際、後見監督人がいる場合には、後見監督人の許可があれば足り、家庭
 裁判所の許可は不要である。

4.被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていない
 にもかかわらず、詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは、
 被補助人は当該行為を取り消すことができない。


【解説】 正解:4

1 誤り
 営業を許された未成年者はその営業に関しては成年者と同一の行為能力を有する
民法6条1項)。
本肢の未成年者が営業の許可を受けたのは「古着の仕入販売に関する営業」に関して
だけである。したがって、成年者と同一の行為能力を有するのも、あくまで「古着の仕入
販売に関する営業」の範囲に限られる。それ以外の場面に関しては、単に未成年者とし
て扱われる。

 自己が居住するために建物を第三者から購入することは、古着の仕入販売に関する
営業とは無関係である。すなわち、本肢の未成年者は、この場面に関して、単なる未成
年者と扱うことになる。購入にあたって法定代理人の同意を得ていない場合、法定代理
人は売買契約を取り消すことができる(民法5条1項本文、2項、120条1項)。


2 誤り
 被保佐人が、民法が定める重要行為を行う場合には、保佐人の同意が必要である
民法13条1項柱書)。この重要行為の中には、不動産の売却(同項3号)だけでなく、
贈与の申し出の拒絶(同項7号)も含まれている。
したがって、贈与の申し出を拒絶する場合にも、保佐人の同意が必要である。

※保佐人の同意が必要な行為を同意なしに行った場合、その行為を取り消すことが
できる(同条4項)。


3 誤り
 成年後見人が、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物またはその
敷地について、売却・賃貸・賃貸借の解除または抵当権の設定その他これらに準ずる
処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない(民法859条の3)


4 正しい
 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その
行為を取り消すことができない(民法21条)。詐術の典型は、制限行為能力者でないと
偽る場合である。これに加え、保護者の同意を得ていると信じさせるために詐術を用い
た場合も、同様に扱われる(大判大12.08.02)。
したがって、本肢の被補助人は、自らのその行為を取り消すことができない。